2026年、リフォーム費用は「納期」の問題から「価格」の問題へ
中古マンションを買うとき、売るとき、「リフォーム費用」は必ずどこかで顔を出します。そのリフォーム費用が、2026年の後半にかけてもう一段上がることが、すでにメーカー各社の発表で確定しています。
きっかけは、2026年春に起きた「ナフサショック」でした。中東情勢の緊迫化でホルムズ海峡の通航に不安が生じ、石油化学の基礎原料であるナフサの調達が滞りました。ナフサは、接着剤・溶剤・塗料・樹脂といった、住宅設備をつくるために欠かせない素材の出発点です。
その影響は4月に一気に表面化します。ユニットバスの壁パネルを貼る接着剤や浴槽のコーティング剤が手に入らなくなり、TOTOが4月13日に新規受注を停止。LIXIL、パナソニック、クリナップも相次いで納期回答を止め、国内の水回り大手がほぼ同時に供給制限に入るという、前例のない事態になりました。
この供給混乱そのものは、収束しています。TOTOは6月9日に全製品の受注を全面再開し、納期も危機前の水準に戻したと発表しました。LIXILやクリナップも正常化しています。
ただし、話はここで終わりません。問題は「納期」から「価格」に移りました。原材料費・物流費・人件費の上昇分は、これから段階的に製品価格へ転嫁されていきます。LIXILは8月・9月・10月の3段階で、YKK APは10月に、断熱材メーカーは9月に——といった具合に、値上げのスケジュールがすでに公表されているのです。
「もう少し様子を見てから」という判断が、いまは裏目に出やすい局面です。この記事では、何がいつ・どれくらい上がるのかを整理したうえで、板橋区・練馬区で中古マンションを買う人と売る人が、それぞれいま何をすべきかをお伝えします。あわせて、板橋区が2026年4月に新設した助成制度もご紹介します。
値上げカレンダー|8月・9月・10月に何がいくら上がるのか
まず、これから何がいつ上がるのかを一覧で押さえておきましょう。いずれもメーカーの公式発表にもとづくもので、2026年7月時点で判明しているものです。
| 時期 | メーカー・品目 | 改定幅の目安 |
|---|---|---|
| 8月3日 受注分〜 | LIXIL 浴室・トイレ・洗面化粧台・水栓金具・タイル | 品目により 数%〜20%台 |
| 9月1日 〜 | 旭ファイバーグラス グラスウール(断熱材)全製品 | 15%以上 |
| 9月1日 受注分〜 | LIXIL 屋根材・外壁材 | 平均13%程度 |
| 10月1日 受注分〜 | LIXIL 住宅サッシ・ドア/インテリア建材 | それぞれ 平均13%程度 |
| 10月1日 〜 | YKK AP 窓サッシ | 10〜15%以上 |
| 10月1日 発送分〜 | 南海プライウッド 家具収納材(全製品) | 一律10% |
※改定幅はメーカー希望小売価格の目安であり、品番・仕様によって幅があります。実際の見積金額は販売店の掛け率や流通在庫の状況で変わりますので、正確な数字は施工会社の見積でご確認ください。
注意したいのは、YKK APの窓サッシが「年内2度目」の値上げだという点です。2026年5月にも価格改定を実施したばかりで、半年も経たないうちの再改定になります。「一度上がったからもう落ち着くだろう」という見立ては、今回は通用しません。
そしてもうひとつ、契約を考えるうえで決定的に重要なポイントがあります。
値上げの適用基準は、多くの場合「契約日」ではなく「メーカーへの発注日」です。つまり、8月2日にリフォーム契約を結んでも、施工会社がメーカーに発注するのが8月3日以降になれば、新価格が適用される可能性があります。「契約さえ済ませれば旧価格」という思い込みは危険です。見積を取る段階で、施工会社に「メーカー発注はいつになりますか」と必ず確認してください。
中古マンションのリフォームで、費用はいくら変わるのか
「数%の値上げなら、そこまで大きな話ではないのでは」と思われるかもしれません。ですが、中古マンションのリフォームで手を入れる箇所を並べてみると、印象が変わります。
中古マンションのリフォームで実際に交換・改修されるのは、おおむね次のようなところです。
- ★ キッチン(システムキッチン本体・水栓金具)
- ★ 浴室(ユニットバス本体)
- ★ 洗面化粧台
- ★ トイレ(便器・温水洗浄便座)
- ★ 内装建材(室内ドア・巾木・収納・フローリング)
- ★ 内窓(インナーサッシ/断熱・防音対策)
- ★ 壁・床の仕上げ材(クロス・タイル)
お気づきでしょうか。この一覧は、8月・9月・10月の値上げ対象品目とほぼ完全に重なります。マンションリフォームの主戦場が、そのまま値上げの直撃コースになっているのです。
目安として、製品価格で100万円分の設備・建材を使うリフォームであれば、改定後はおおむね16万円〜21万円程度の差が生じうる規模感です。水回りをひととおり入れ替えて内装も一新するようなフルリフォームでは、製品価格の比重が高くなりますから、総額での差はさらに開きます。
そして、この値上げは「一時的に上がって、また戻る」性質のものではありません。原油価格、円安、物流費、そして建設業の人手不足による人件費上昇——押し上げ要因が構造的だからです。過去のウッドショックのときも、価格はピークから多少落ち着いたものの、危機前の水準には戻りませんでした。
「待てば安くなる」ではなく、「上がる前に動いて、使える制度で負担を相殺する」——これが2026年後半のリフォームの考え方になります。
その物件、仲介手数料が変わるかもしれません
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💬 LINEで手数料を確認する【買う人へ】「物件価格+リフォーム費」で資金計画を組み直す
中古マンションの購入とリフォームは、ほとんどの場合セットです。だからこそ、値上げが資金計画に直接効いてきます。買う側の立場で、いま押さえておくべきことを3つに絞ってお伝えします。
1. リフォーム見積の「有効期限」を必ず確認する
物件探しからローン審査、契約、決済——中古マンションの購入は、動き出してから引き渡しまで数か月かかるのが普通です。その間に8月3日や10月1日をまたげば、先に取ったリフォーム見積は使えなくなる可能性があります。
「この見積、いつまで有効ですか」「メーカーへの発注は何月になりますか」。この2つを聞いておくだけで、後から数十万円の想定外が出る事態は防げます。
2. 住宅ローン金利の上昇と「二重で」効いてくる
もうひとつ、2026年の夏はローン側でも節目を迎えます。日銀の利上げを受けて、住宅ローンの変動金利は8月から新規融資分に引き上げが反映されていきます。つまり買う人にとっては、「リフォーム費用が上がる」「借入コストも上がる」が同時に来ることになります。
リフォーム費用を住宅ローンに組み込む(リフォーム一体型ローン)場合、この影響は借入期間を通じて効いてきます。金利の動きについては、こちらの記事で詳しく整理しています。
▶ 関連記事:住宅ローンの変動金利、2026年8月からいよいよ上昇へ
3. 補助金は「工事の前」に申請しないと使えない
値上げ局面だからこそ、補助金の価値は例年より大きくなります。国の「住宅省エネ2026キャンペーン」も、板橋区の助成制度も、着工前の申請が原則で、予算の上限に達すると受付が終了します。工事を始めてから「使えばよかった」と気づいても、遡っての申請はできません。
どの制度が使えるのかは、この記事の後半で板橋区・練馬区に絞って整理しています。
【売る人へ】「売却前リフォーム」は本当に得なのか
売却をお考えの方から、私たちがよくいただくご相談があります。「水回りが古いので、リフォームしてから売ったほうが高く売れますか?」というものです。
結論から申し上げると、2026年の後半は、売却前の大規模リフォームは慎重に判断すべき局面です。理由は2つあります。
理由1:リフォーム原価が上がり、投資回収のハードルが上がった
売却前リフォームは、かけた費用以上に売却価格が上がって初めて成り立ちます。ところが、ここまで見てきたとおり、そのリフォーム原価が8月・10月とさらに上がっていきます。同じ工事をしても、投じる金額は増える。回収のハードルは、確実に上がっています。
理由2:市場が「強気な価格」を通してくれなくなってきた
東日本レインズが2026年7月10日に公表した6月のデータを見ると、市場の変化がはっきり出ています。
- ★ 首都圏の中古マンション成約件数は4,241件(前年同月比1.3%減)で、3か月連続の減少
- ★ 東京都は2,136件(同9.5%減)。とくに東京23区は6か月連続で前年を下回っています
- ★ 在庫件数は45,995件(同3.5%増)で、4か月連続の増加
- ★ 成約㎡単価は82万6,400円(同0.8%減)と、2か月連続の下落
「成約は減り、在庫は積み上がっている」——これは、買い手が価格を選び始めたということです。こういう市場で、リフォーム費用を上乗せした強気の売出価格をつけると、売れ残って結局値下げする、という一番避けたい展開になりがちです。しかも今回は、上乗せしたいリフォーム費用そのものが値上がりしています。
では、売主は何をすべきか
費用対効果という観点では、次の3つが現実的な打ち手です。
- ★ ハウスクリーニング——数万円で第一印象が大きく変わる、もっとも投資効率の高い施策です
- ★ 部分補修——クロスの張り替え、建具の調整、水栓の交換など、目につく劣化だけをピンポイントで直す
- ★ 現況渡し+価格調整——リフォーム前提で買いたい層に、その分を価格で還元する。買主は自分好みに直せるので、むしろ喜ばれるケースも少なくありません
フルリフォームして高く売るか、現況のまま適正価格で早く売るか。この判断は、物件の状態・築年数・競合物件の状況によって答えが変わります。板橋・練馬の実際の成約事例と、いまの在庫状況を見たうえで判断しないと、大きな金額を失いかねません。
▶ 関連記事:令和8年分 路線価発表|板橋・練馬はどう動いた?
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ここまで、値上げという逆風の話を続けてきました。ですが、この状況には中古マンションにとっての追い風という側面もあります。そこを見落とすと、判断を誤ります。
建材と設備が値上がりして困るのは、リフォームだけではありません。新築こそ、その影響を丸ごと受けます。
建設物価調査会が公表する建築費指数(東京・2015年平均=100)を見ると、2026年3月時点で次の水準です。
- ★ 集合住宅(鉄筋コンクリート造):143.3(前年同月比+5.5%)
- ★ 木造住宅:149.3(前年同月比+5.9%)
10年で4〜5割の上昇です。しかも上昇は止まっていません。資材だけでなく、建設業の人手不足による人件費上昇、2024年からの時間外労働の上限規制、2025年4月から義務化された省エネ基準への対応——どれも構造的な要因で、新築の建築費が下がる材料が見当たらないのが実情です。
この結果、新築マンションの価格は高止まりし、供給も限られます。板橋区でも、板橋駅西口では地上37階・約390戸のタワーマンションの建築工事が2026年7月に着工し、竣工は2030年の予定です。魅力的な計画ですが、住めるのは4年後で、価格は今の建築費水準を織り込んだものになります。
▶ 関連記事:板橋駅西口の再開発で周辺中古マンションの資産価値はどうなる?
その一方で、中古マンションには新築にはない強みがあります。
- ★ すぐに住める——完成を何年も待つ必要がありません
- ★ 総額が読める——物件価格が最初から確定しており、資材高騰による追加費用の心配がありません
- ★ 立地を選べる——新築は建てられる場所が限られますが、中古なら駅近・学区・環境から選べます
- ★ リフォームの範囲を自分で決められる——予算に合わせて、直すところと残すところを選べます
建築費が上がり続けるということは、新築との価格差が開くということでもあります。値上げは、中古マンションの相対的な割安感をむしろ強めている——これが、逆風の裏側にあるもうひとつの事実です。
板橋区・練馬区は、23区のなかでも実需のご家族が手を伸ばせる価格帯が残っているエリアです。「中古を買って、必要なところだけリフォームする」という選択肢が、いまもっとも現実的に機能する場所だと、私たちは考えています。
板橋区・練馬区で使えるリフォーム補助金・助成金
値上げの局面だからこそ、使える制度は取りこぼさないでください。ここでは、板橋区・練馬区で中古マンションを購入・リフォームされる方が対象になりうる制度を整理します。
板橋区の新制度(2026年4月スタート)
板橋区は2026年4月から、子育て世帯を対象にした2つの助成制度を新たに開始しました。区が策定した住まいの基本計画「住まいの未来ビジョン2035」にもとづくもので、30代・40代の子育て世帯の区外転出が多い状況への対策と位置づけられています。まさに、中古マンションを買って板橋区に住もうとしているご家族のための制度です。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 子育て世帯 住宅リフォーム 支援事業 | 子どもの安全に配慮するリフォーム工事が対象。対象工事費(税抜)の2分の1、上限50万円。 対象は18歳以下の子を扶養する世帯(妊娠中でおやこ健康手帳が交付されている世帯も含む)。手すりの設置、段差の解消、対面キッチンへの改修、遮音性が向上する床材への交換など。 マンションは専有部分が対象です。 |
| 多世代 住み替え 支援事業 | 親世帯との近居・同居のための転居費用を助成。実費の合計に対して上限20万円。 引越費用、賃貸契約時の礼金・仲介手数料、住宅購入時の諸費用などが対象。区外からの転入だけでなく、区内での引っ越しも対象になります。 |
【重要】どちらも工事着手前・転居前の事前申請が必須です。また、リフォーム支援事業は「板橋区住宅リフォーム事業者登録制度」に登録された事業者が施工した工事に限られます。予算の上限に達し次第、受付は終了します。制度の詳細・最新の受付状況は、板橋区住宅政策課(電話 03-3579-2186)または区の公式サイトでご確認ください。
国の制度|住宅省エネ2026キャンペーン
お住まいの区に関係なく使えるのが、国の省エネリフォーム支援です。2026年は次の事業が実施されています。
- ★ 先進的窓リノベ2026事業——内窓の設置や窓の断熱改修。マンションでもっとも使いやすく、補助が手厚い工事です
- ★ みらいエコ住宅2026事業——旧・子育てエコホーム支援事業の後継。省エネ改修全般が対象
- ★ 給湯省エネ2026事業——高効率給湯器の設置
いずれも予算の上限がある先着順で、事業者登録を受けた施工会社が申請主体になる仕組みです。見積の段階で「補助金の登録事業者ですか」と確認しておいてください。補助額の上限や対象製品は年度ごとに変わりますので、詳細は各事業の公式サイトでご確認ください。
練馬区の場合
正直にお伝えすると、練馬区には板橋区のような「リフォーム全般」を対象とする独自の助成制度は、現時点では見当たりません。区の制度は耐震改修、バリアフリー改修、省エネ設備の設置といった目的別のものが中心です。
ただし、練馬区にお住まいの方・これから住む方も、国の住宅省エネ2026キャンペーンや、東京都の既存住宅省エネ改修促進事業(クール・ネット東京)は同じように使えます。制度は年度ごとに新設・変更されますので、最新の実施状況は練馬区の公式サイトでご確認いただくことをおすすめします。
まとめ・よくあるご質問
最後に、この記事の要点を整理します。
- ★ 春のナフサショックによる供給混乱は収束したが、問題は「納期」から「価格」へ移った
- ★ LIXILは8月3日・9月1日・10月1日の3段階、YKK APは10月1日に値上げ。断熱材・内装建材も9〜10月に続く
- ★ 値上げの適用基準は「契約日」ではなく「メーカー発注日」。見積時に必ず確認を
- ★ 買う人は、リフォーム見積の有効期限と、8月からの変動金利上昇の両方を織り込んだ資金計画を
- ★ 売る人は、原価上昇+在庫増の市場で、売却前リフォームの投資回収が難しくなっている点に注意
- ★ 板橋区は2026年4月に助成を新設。リフォーム最大50万円、住み替え最大20万円(いずれも事前申請・先着順)
- ★ 新築の建築費高騰は続く。値上げは「中古+リノベ」の相対的な有利さを強めている面もある
よくあるご質問
Q. 値上げ前に契約すれば、必ず今の価格でリフォームできますか?
A. 必ずしもそうとは限りません。多くのメーカーは「契約日」ではなく「メーカーへの発注完了日」を現行価格の適用基準としています。契約しても発注手配が改定日以降になれば、新価格が適用される可能性があります。施工会社に発注予定日を確認してください。
Q. リフォームは「待てば安くなる」のではないですか?
A. 今回の値上げは、原油価格・円安・物流費・人件費といった構造的な要因によるものです。2021年のウッドショックのときも、価格はピークからは落ち着いたものの、危機前の水準には戻りませんでした。「待って安くなる」ことを前提にした計画は、おすすめしていません。
Q. 中古マンションを買ってからリフォームすると、二重にお金がかかりませんか?
A. リフォーム費用を住宅ローンに組み込める「リフォーム一体型ローン」を扱う金融機関があります。物件購入とリフォームをまとめて借りられるため、金利の低い住宅ローンで賄えるのが利点です。ただし、事前にリフォームの見積が必要になるなど、段取りに注意が必要です。
Q. 板橋区の助成金は、中古マンションを買ってから申請できますか?
A. 子育て世帯住宅リフォーム支援事業は、区内の住宅に「住んでいる、または住む予定である」方が対象で、マンションは専有部分が対象です。ただし工事着手前の申請が必須で、区の登録事業者による施工が条件になります。購入とリフォームのスケジュールを、申請の流れに合わせて組む必要があります。段取りにご不安があれば、私たちにご相談ください。
Q. 売却前にリフォームすべきかどうか、どう判断すればいいですか?
A. 物件の状態、築年数、同じマンション・近隣の競合物件の状況によって答えが変わります。板橋・練馬の実際の成約事例と現在の在庫状況を照らし合わせて判断する必要があります。結エステートでは、リフォームした場合・しなかった場合の想定価格を両方お出しして、費用対効果をご一緒に検証しています。
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